2009年01月25日

恋愛太平記

恋愛太平記〈1〉〈2〉/金井美恵子(集英社文庫)
恋愛太平記〈1〉 (集英社文庫) 恋愛太平記〈2〉 (集英社文庫)

たまたま紀伊国屋に寄ったときに復刊がフォーカスされていたのでつい買ってしまう。これこそが金井美恵子の「饒舌体」であります。噂話は楽しいのだ! それこそ近所のおばちゃんたちがあーでもないこーでもないとだらだらだらだらしゃべっているのをそのまんま文章にしたような、何々してたら誰々がどうこう言うものだからこれこれしようと思ったときに誰々から電話がかかってきてそのあと誰々とどこどこで会ってうんぬんかんぬんといった調子で文庫本2冊! 楽しくて楽しくてこのまんま永遠に読んでいたい。で、それで、今朝子ちゃんは、夕香ちゃんは何をしてるんだろう? とこの人たちのお話に混ぜてもらいたいような気さえする。
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2009年01月23日

ゼラニウム

ゼラニウム
堀江 敏幸
4022577029

短編集。アルクィユにかかる水道橋でのぼんやりした回想形式で書かれた「薔薇のある墓地」が良かった。冒頭、どこまでもどこまでも続いていく長い一文に度肝を抜かれ、よ、よみにくい、と絶句するも2、3ページ読み進むと慣れた。他5編はどれも唐突な終わりが余韻を残す。同じ学者さんの小説でも松浦寿輝のずぶずぶ世界より健やかな感じ。お休みの日などにぼおっと読むと優雅な時間が味わえると思う。無性にフランスに行きたくなる(笑)。
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2009年01月12日

海に落とした名前

海に落とした名前
多和田 葉子
4104361038

短編(中編、かな)4つ。どれもシンプルな物語で、『飛魂』や『聖女伝説』、『変身のためのオピウム』を経たあとでは物足りない、と感じてしまうが「U.S+S.R 極東欧のサウナ」は明確な骨子をもたない作品ながら、ひとつの文がa)b)c)という具合に複数の可能性を提示しながら展開していく、という「反小説」で、なんとなく、この人のものの書き方というものが、ほんの少しだけ分かったような、分からないようなで、興味深かった。
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2009年01月11日

聖女伝説

聖女伝説
多和田 葉子
4872332857

そしてさらにさらに多和田葉子。これはもう、残り三分の一あたりからあっけにとられるしかなくなる展開で、薄笑いさえ浮かんできた。ひとりの作家の作品をこれほどまとめて一気に読んだことはなかったのではないだろうか。でも、何作読んでも、この人の核になにがあるのか読めない。なんだかもう、ひれ伏してもかまわない、という感じ。
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2009年01月08日

変身のためのオピウム

変身のためのオピウム
多和田 葉子
4062108518

そしてさらに多和田葉子。22人の美しい名を持つ神話の女たちが少しずつ重なり合いながら詩的な世界を紡いでいく。なんだかもう、いったい、どこまで? という感じ。絶版になってるけどこれはちゃんと手元に置いて何度でも読み返したい。
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2009年01月06日

紫苑物語

紫苑物語 (講談社文芸文庫)
石川 淳
406196044X

『飛魂』のアマゾンレビューにあがっていたので、お勉強熱心なものだからさっそく借りてみる。うわ、ふるめかしい古文調だ、と顔を顰めたのもつかの間、物語じたいの持つ引力がすごくて途中でやめられなくなる。わたしにとってはまったく新しいジャンル。表題作よりも「八幡縁起」が良かった。
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2009年01月05日

二〇〇二年のスロウ・ボート

二〇〇二年のスロウ・ボート (文春文庫 (ふ25-1))
古川 日出男
4167679744

村上春樹の『中国行きのスロウ・ボート』を読んでいないのでリミックス作品、といわれてもどこがどうミックスされているのか分からないのだけれど、これはこれで独特の軽さ/リズム/衝動があり、この人の書いたものももっと読んでみたい、と思った。なにせ『ベルカ、吠えないのか?』は昨年読んだもののなかでは10本の指に絶対入る。なんだかんだいって、私たち、好むと好まざるとにかかわらず、みな村上春樹の影響下に置かれているということ。
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2009年01月04日

旅をする裸の眼

旅をする裸の眼 (講談社文庫)
多和田 葉子
406275942X

こちらも購入。とある映画女優をめぐり、ヴェトナムからベルリン、そうしてパリへ、ひとつの眼が旅を続けていく。各章のタイトルは全部、とある映画女優の出演作品。いくつか見た映画もあるけど、映画の筋書きと、この裸の眼の物語が渾然一体となって、どこにもない時空間を紙の上の表出させている。なんだかもう、ごめんなさい、という感じ。
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2009年01月03日

犬婿入り

犬婿入り (講談社文庫)
多和田 葉子
4062639106

これは文庫になっているので購入。表題作のほうはちょっと金井美恵子を思わせるようなひねくれた文体だった。たぶん多和田作品のなかでは一番有名なのだろうけれど、あまりピンとこず。私自身、ユーモアのセンスが欠如しているもので。
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2009年01月02日

飛魂

飛魂
多和田 葉子
406209150X

だから早速図書館に行って目に付いた本を片っ端から借りて読むことにした。そうしたら、もう、最初の1ページを読んだ段階で、これこそ、わたしがずっと読みたいと思っていた本だ、と思ったのだった。

「ある日、目を覚ますと、君の枕元には虎が一頭、立っているだろう。」

完璧な書き出し。読み終えるのがもったいなくて、身体が震えた。
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2009年01月01日

ゴットハルト鉄道

ゴットハルト鉄道 (講談社文芸文庫)
多和田 葉子
4061984020

不幸にも多和田葉子は河出文庫の『文字移植』しか読んだことがなく、たまたま気まぐれで読んでみたら表題作よりも「無精卵」のものすごい展開にうちのめされて、これまでわたしはいったい何を読んできたのだろうか、と頭をかかえ、そのうえこれまでわたしはいったい何を書いてきたのだろうか、と失語症に陥ってしまったのだった。
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2008年11月19日

腐っていく感じ

花腐し (講談社文庫)
松浦 寿輝
4062751216

小説はまだ『もののたはむれ』をたわむれに読んでみただけなのだけど、なんかどれもこれも似たような感じの話。くたびれた中年男が東京のどこかうらぶれたあたりで迷子になり、過去の亡霊(それはたいてい昔の女である)に捕らわれて、ぐずぐずに腐っていく。『花腐し』のほうは腐り方が半端でなくて、本当に腐臭が漂ってきそうなくらい汚らしい。読んでいるこちらも投げやりな気分になってきて、そうだそうだ何もかも腐ってしまえばいいのだ、と自堕落な午後をたゆたってしまいそうになる。
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2008年11月07日

さようなら、ギャングたち

さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)
高橋 源一郎
4061975625

えー、ホントに読むのかな、と思いつつなんとなく図書館で借りてみる。案の定わけがわからないのだけれど、わからないながらもきちんと「小説」として読めてしまったこの不思議。それも読みやすい。おまけにほろりとさせられた(悔しい)。第一部のタイトルは「中島みゆきソング・ブックを求めて」というのだが、それから連想させられる中原昌也の『マリ&フィフィの虐殺ソング・ブック』の無意味に比べればはるかに何かがある(日本語おかしいな)、何があるのか分からないけど。講談社文芸文庫、というのがどーしても腑に落ちないが、『ジョン・レノン対火星人』も『虹の彼方に』も読んでいいと思った。いやいや、読みます、読ませていただきます、インテリ源ちゃん(なつかしー)。
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2008年09月25日

音楽だけが悪を、

沈黙/アビシニアン (角川文庫)
古川 日出男
4043636024

凄い! 言葉が煮えたぎってる!

と思ったのだった。『沈黙』は「ルコ」と呼ばれる音楽を巡っての壮大な年代記。『ベルカ、吠えないのか?』も破壊力満点だったけど、さらに上をいく。エリクソンの『黒い時計の旅』『Xのアーチ』を足したような(ということはマジモロ私好みの)、そこにさらにガルシア・マルケスの夢幻と、翻訳されていない言葉のダイレクトなリズムを加えたら、そりゃあ圧倒されるに決まってる。この人は音楽を言葉で表現する。もしかすると、音楽よりも雄弁に。音楽だけが悪を、凌駕する、音楽のような言葉が。『アビシニアン』は一度は保健所に連れられていった猫を奪還した少女が野良猫としての生を獲得し(文字通り彼女は野良猫になってしまう!)、文字を喪失したのちに語り部の少年と出会い恋に落ちる、といういっけん単純な(?)構造をしているが、失読症の世界を言葉で表現するというねじれを巧みに利用して魔術のような言葉でもって一気に読ませてしまう。古川日出男はヴィジョネールである。その幻視に、酔わされる。
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2008年09月13日

カタルシスの欠如

レディ・ジョーカー〈上〉〈下〉
高村 薫
4620105791

レディ・ジョーカー

なかなか文庫にならないものだからもうハードカバーでいいことにした。村氏は文庫化にあたってばっさりと構成を変えてくる人だが、今作は緻密にすぎる筆がしんどかった。実質2日で読み終えた自分もどうかと思うが(二段組の上下二巻だもの。おかげで目が痛い)。

日之出ビール(エンブレムは金色の鳳凰である。アサヒビールとキリンビールを足して2で割ったようなネーミングが絶妙)社長誘拐事件とそれに続く身代金要求、という「事件」は確かに起こるのだが、超巨大企業をとりまくシステムは「事件」の解決を許さない。犯人でさえ、不気味なシステムの見えざる手によって葬り去られていく。その過程に戦慄する。『リヴィエラを撃て』とか『黄金を抱いて翔べ』のような爽快な犯罪モノとはまったく異なり、胸いっぱいに重い砂を飲まされたような読後感が残る。裁かれることもなく許されることもなく、どろりとした流れのなかに飲み込まれていく悪の数々は結局個々人の内側で、消化されるか黙殺されるしかない。指差し機能も自浄作用も失ったどん詰まりのシステムを前に呻吟する男たち(女たち、は驚くほどに排除されている)。「ジョーカー」とは「解決しえぬもの」の別称でもあるのだろう。

最終的にジョーカーを引かされるのは読者である、という、このカタルシスの欠如はいかんともしがたい。作中、根来から加納へはついに手渡されることのなかった「シモーヌ・ヴェーユ著作集」でも読むか(笑)。
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2008年09月04日

クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ (文春文庫)
横山 秀夫
4167659034

母親の本棚から失敬。まるで戦場のような、日航機墜落事故をめぐる某地方新聞社の制作現場。怒声、罵声が飛び交う。社内の駆け引きと、家庭との齟齬、そうして報道のあり方を問うラストとが、うまく絡まりあっていて一気に読了。『半落ち』は「泣けるいいお話」然とした読後感が好きでなかったが、こちらは最初から最後まで張りつめたテンションが続く。映画では悠木は堤真一さん。最近大活躍ですな(ガリレオ、ガリレオ・笑)。
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2008年08月13日

タマや

タマや (河出文庫)
金井 美恵子
4309405819

読んじゃった読んじゃった、なんというかこの閉塞状況に耐えかねて、紅梅荘の開放的な空気を味わいたく。これという目的もなく、それこそ「希望もしない、絶望もしない」できゃっきゃきゃっきゃとじゃれあう人々。もちろん金井美恵子なのでそこには猛毒がしかけてあるのだけれど、この猛毒を逆に解毒剤とせずなんとする。現実世界ではこうまでぽんぽん都合よく偶然は連鎖しないが、この虚構ならではのスピード感を味わうもまたよし。登場人物全員が愛すべきキャラ。「人生というのは、事実の連続というよりはるかに出来事の連続あるいは不連続というべきものじゃないだろうか」、と、情けない役回りで登場させられる精神科医も最後にいいことを言う(大ラスでは結局どーんと落とされるのだけど)。事実は比較的恣意的である。出来事だけが絶対的。出来事、あるいは事件、ドゥルーズの…いやいやだめだめ、そのへんの話はまだしばらく禁止、とにかく、楽しいのですよ、この人たちは。
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2008年08月05日

怒りの子

怒りの子 (講談社文芸文庫)
高橋 たか子
061983741

玉のような京都弁に神経を逆なでされつつ(ごめんなさい京都の人)、のつこつのつこつ読み終える。こういう読み方は話が分断されてしまうので嫌いだ。物語のもつスピードを殺してしまう。読書は時間芸術なのに。

女が女の敵になる状況のいやらしさが、いやらしさとしてダイレクトに体感できるような後半部分がすごい。「うち、この顔、好きやない」としか言い表しようのない嫌悪感。山本ますみのたまらないうっとうしさを前にしたとき、美央子の怒りが我がことのように思えてくる。

「自分のことすてきや思たはるんやないか思て、おすすめするわ。自分のことすてきや思たはる女が、都会のすてきな男と連れだったはったりして、似合わんことあるし」

こんなことを、平気で言う無神経な女がたしかに存在するのだから怖い。誰のうちにも潜むという怒りの子を、今のところはうまく飼いならしているけれど。

主題は女の底意地の悪さと美央子の「決まらなさ」。この「決まらなさ」を置き去りにして、著者は神の世界へ踏み込んでいってしまう。なんだ、結局、そこへ行くしかないのだろうか、と、「枠が欲しい」と夢で叫んだことのある私はついつい、その方向を夢想する。
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2008年07月17日

yes,anastasia.

貴婦人Aの蘇生 (朝日文庫)
小川 洋子
4022643552

貴婦人…貴婦人。その聞きなれない響きはなんとも小川洋子の作品世界にぴったりマッチしていて、ずっと読みたいと思っていた(洋館、というのもきわめて小川洋子的)。でも「A」がアナスタシアのAだとはまったく予想していなかった。

とてもみずみずしいひと夏の描写。終わりは少々唐突な感じもしたが、そんなに長続きしないであろうことがこの物語の成立条件だからそれでいいのだろう。『薬指の標本』の印象が強いからか、この人の作品は舞台をヨーロッパに置き換えたとしてもすんなりとなじむ。たとえばこの話がフランスやベルギー、ブルガリアやルーマニアの一地方都市での出来事とされても、きっとあんまり違和感はない。
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2008年07月11日

生の暗部へ

誘惑者 (講談社文芸文庫)
高橋 たか子
4061963449

こんな本が絶版になっていたりするような世の中だから「周りがすべて悪いと思っている」なんてな尊大な物言いがまかり通る(まかり通らない?・笑)んだ、現在少数厳選読書期間中につき読後感をぐだぐだ書くことは控えるが、こういう話を「暗い」だとか「うざい」だとか言って忌避する風潮がとことん嫌いだ。暗くてうざいことのなかでしか見えないことがたくさんある。そんなのを全部切り捨ててしまって幸福だの充足だのいってみたところで全部ぺらっぺらのうそっぱちだ。生の暗さに向き合うことは、つまらないことでも面倒なことでもない。
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