スタニスワフ・レム 沼野 充義

同じく『百年の誤読』をぱらぱらしていて、あ、これも読んでないなあ、と。タルコフスキーの映画は観たけどぼんやり白い印象しかない。で読後感としてはやっぱり映画より、文章のほうが良い。ソラリス学の展開を読んでいてこれまでやりすぎなんじゃないの? と敬遠していた『虚数』や『完全な真空』を読んでみたくなった。巻末の解説で、ソダーバーグのラブ・ストーリーでもタルコフスキーの懐かしさでもない、とレム自身が否定していた。たしかに、ソラリスの海とは「人間」という尺度を拒否する得体の知れない何かでしかなく、人間形態主義的な解釈の方法では太刀打ちできない存在をめぐる葛藤こそがテーマであったように思う。たぶん映像では表現することのできない、認識論的な話。いささか唐突に提示される「欠陥をもった神」というソラリスの海の一解釈を毅然と引き受ける主人公の姿勢がなぜかとても美しいものに思えた。

