2008年11月18日

雨はコーラがのめない

雨はコーラがのめない (新潮文庫 え 10-14)
江國 香織

雨はコーラがのめない。しとしと降る雨とぱちぱちはじけるコーラはたしかにまじりあわないだろう、明るい世界への漠然とした拒絶、のようなものを感じさせる素敵なタイトルだな、と思っていたけどなかなか江國香織のエッセイなど手にとる機会はなく、昨日図書館でたまたま見かけたので借りた。タイトルを知っていたのはLISA GERMANO「Lullaby for Liquid Pig」のアマゾンレビューに「江国香織が『雨はコーラが飲めない』というエッセイの中でとりあげていて、ライナーノーツを書く依頼があったと言っているので」、と書かれていたから。ちなみに「雨はコーラが飲めない」とのめないを漢字にして検索すると出てこない。どんどんひらがなが増えていく傾向が私はあまり好きではない。

中を開くと「雨」は飼い犬のアメリカン・コッカスパニエルの名であることが判明する。なあんだ。そりゃコーラは飲めないね。雨と、音楽の話がたんたんと続く。カーリー・サイモン、クイーン、尾崎紀世彦、スティング、シェール、リッキー・リー・ジョーンズ、おやおや、LISAはいつ出てくるんだろ。ライナーノーツを書く依頼があったというのはメリー・コクランというアイルランドの女性歌手のことだそう。LISAの国内盤に江國香織のようなビッグネームがライナーを書く、なんてこと、ありえそうにない話だもの。

雨は非常に元気のよい犬である。あちらこちらをかじりまわり、壊しまわり、遊んで遊んでとじゃれついている、とてもかわいい犬。この雨のイメージとLISAのイメージはまるでかぶらない。きっとあの気だるい音をきいたら雨はつまらなく思って眠ってしまうだろう。

そんなことを思いながらぱらぱらページを繰っていくと、雨はかわいそうに、白内障を患って失明してしまう。もちろん江國香織はそのあたりのことを悲劇的に書いたりはしない。ドライな言葉を選びながら、それでも確実に悲しい気持ちが伝わるような、さりげない書き方をする。白く濁った雨の眼球、光を失った犬、さて、そこでLISAだ。

やはり「Lullaby for Liquid Pig」の流れる部屋に雨はいない。ワクチン接種に出かけている。「LISA GERMANOのアルバムは、不在の存在する部屋に、嘘みたいにしっくりなじむ」。ああ、なるほど。私の部屋には不在が満ちているからね。雨が帰ってきたらホイットニー・ヒューストンとかサンタナを、「もっと現実的で雨好みと思われる曲をかけよう」、と江國香織。あらあら、そうですか。

「Lullaby for Liquid Pig」は、今日みたいな薄曇りの日によくなじむ。これで小雨でもふりはじめれば、もっとぴったりなのだけど。

Lullaby for Liquid Pig
Lisa Germano
B000QUTSCU

こちらはYOUNG GODから再発されたボーナストラック入りのもの。わたくしの最も愛する音楽です。
posted by nadja. at 13:45| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。