2008年09月25日

音楽だけが悪を、

沈黙/アビシニアン (角川文庫)
古川 日出男
4043636024

凄い! 言葉が煮えたぎってる!

と思ったのだった。『沈黙』は「ルコ」と呼ばれる音楽を巡っての壮大な年代記。『ベルカ、吠えないのか?』も破壊力満点だったけど、さらに上をいく。エリクソンの『黒い時計の旅』『Xのアーチ』を足したような(ということはマジモロ私好みの)、そこにさらにガルシア・マルケスの夢幻と、翻訳されていない言葉のダイレクトなリズムを加えたら、そりゃあ圧倒されるに決まってる。この人は音楽を言葉で表現する。もしかすると、音楽よりも雄弁に。音楽だけが悪を、凌駕する、音楽のような言葉が。『アビシニアン』は一度は保健所に連れられていった猫を奪還した少女が野良猫としての生を獲得し(文字通り彼女は野良猫になってしまう!)、文字を喪失したのちに語り部の少年と出会い恋に落ちる、といういっけん単純な(?)構造をしているが、失読症の世界を言葉で表現するというねじれを巧みに利用して魔術のような言葉でもって一気に読ませてしまう。古川日出男はヴィジョネールである。その幻視に、酔わされる。
posted by nadja. at 18:35| 小説*日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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